i−TFCシステムはファイバーポスト(光ファイバーポスト、ポスト(ワイヤー入り))とスリーブ、アクセサリーファイバーを根管形態に合わせて使用することで、容易にファイバーアレンジメントを行うことができます。
繊維強化材を中心に入れる配置は、力学的に不合理な補強の配置であり、Tylman’s Theory and Practice of Fixed Prosthodonticsの第5版に引用されている1934年のフランスの文献にも、すでに指摘されています。このことから、繊維強化材は中心だけに入れることが一番効果のない配置で、最外周の表面直下にも配置するべきだと結論付けられています。
Lakermange and Gononの考案した補強形態の断面図
Tylman’s Theory and Practice of Fixed Prosthodontics 5th ed, 1965.
新谷ほか:ガラス繊維強化によるメタルフリーブリッジシステム,DE 126,1998.
眞坂ほか:新しい接着支台築造法の提案 i−TFCシステムの臨床, ㈱ヒョーロン・パブリッシャーズ,,2009
建築用コンクリートの鉄筋は、外周に配置することで亀裂の発生を最小限にできます。i-TFCシステムの製品設計はこの理論に基づいています。
i−TFCファイバーの配置を変え3点曲げ試験による曲げ弾性率と曲げ強さを検証しました。その結果、曲げ弾性率の変化は少なく象牙質と同程度であったのに対し、曲げ強さはファイバー量の増加と共に向上することが確認できました。
このことから、ファイバーアレンジメントの最大のメリットは、曲げ強さが上がっても弾性率は象牙質の範囲にとどまることだと言えます。
i−TFCファイバーの配置を変えた3点曲げ試験
高橋英和.支台築造歯の歯根破折のメカニズム.
補綴誌 2001;45(6):669-678. などより改変
ファイバーポストの配置は圧縮応力が働く側よりも、引張応力が働く側に入れた方が曲げ強さは有意に増加するといわれています。これを口腔内で考えた場合、歯の変位方向と反対側が引張応力の働く方向となるため、ファイバーアレンジメントを行う場合、歯の変位方向と反対側をより補強したほうが効果的です。
歯の変位方向
歯の変位方向。下顎は前歯も臼歯も舌側に変位するのに対し、上顎の前歯は唇側に、上顎の臼歯は機能咬頭で咬合すると口蓋側に変位するが、頬側咬頭で咬合すると頬側に変位する。(青矢印)
ファイバーポストの配置目安
生命力学的ファイバーアレンジメント。上顎前歯は舌側に臼歯は頬側にメインファイバーポストを、下顎は頬側にメインファイバーポストを配置。
荒井良明:ファイバーポストの効果的利用方法-レジン支台築造の失敗を防ぐために-.日本歯科評論,
72(4),113-120,2012.